「負担付贈与」とは、一定の債務(借入金など)を負担させることを条件として、財産の贈与を行うことをいいます。
例えば、住宅ローンを負担してもらうことを条件として、マンションを贈与するケースなどが該当します。
「贈与財産の価額から、債務額(負担額)を控除した価額」を受贈益と捉え、この受贈益に対し、贈与税が課税されることとなります。
土地・借地権・家屋・構築物を負担付贈与によって贈与した場合、贈与時の通常の取引価額(時価)から負担額を控除した価額となります。
一方、贈与された財産が土地・借地権・家屋・構築物以外の場合、贈与時の相続税評価額から負担額を控除した価額となります。
通常の贈与の場合、土地・借地権・家屋等は「相続税評価額」により評価を行います。
しかし、上記の通り、負担付贈与では通常の市場における取引価格=時価により評価を行うこととなります。
一般的に相続税評価額は市場価額よりも低くなり、土地などは時価の7~8割程度の金額で計算されます。
通常の贈与よりも負担付贈与の方が評価額が高くなるため、贈与税の負担も重くなってしまいます。
敷金付の貸家を贈与する場合、敷金相当額の現金を同時に贈与するかにより、通常の贈与・負担付贈与の区分がされ、贈与税の負担額が変わります。
敷金付の貸家の所有権の移転があった場合、当事者間に敷金の引継ぎに関する合意がなくても、新所有者は当然に敷金を引き継ぐこととされています。
そのため、敷金付の貸家のみを贈与した場合、法形式上は負担付贈与に該当します。
しかし、貸家の贈与に併せ、敷金相当額の金銭の贈与を同時に行った場合、敷金という債務を承継させる意図が贈与者、受贈者間においてなく、実質的な負担はないと考えられるため、負担付贈与には該当せず、相続税評価額での贈与となります。
前述の通り、建物等を負担付贈与した場合の課税価額は、相続税評価額ではなく通常の取引価額(時価)となるため、貸家を贈与する際には注意が必要です。
例えば、父から息子にマンションを住宅ローンとセットで贈与するケースを考えてみます。
・マンション(購入価額3,000万円・税務上の簿価2,000万円・市場価額3,000万円)
・住宅ローン(2,500万円)
このケースでは、息子に対し、負担付贈与として贈与税が課税されるのみではなく、父に対しても所得税が課税されることとなるため注意が必要です。
税務上、父は子に対して債務を贈与することで、その分利益を受けていると考え、住宅ローンの金額でマンションを売却したものとみなされます。
そのため、(住宅ローンの金額=2,500万円)-(税務上の簿価=2,000万円)=500万円に対し、所得税が課されることとなります。
負担付贈与を行う場合は、贈与者・受贈者に意図しない課税が発生しないよう課税関係を整理した上で手続きを行う必要があります。
ポイント
負担付贈与の場合、土地建物は、相続税評価額ではなく、通常の取引価額(時価)により評価される。
貸家を贈与する場合、敷金相当額の現金もあわせて贈与することで相続税評価額で贈与できる。
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