居住用財産の「3,000万円特別控除」をやさしく解説

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― 居住用財産の「3,000万円特別控除」をやさしく解説 ―

マイホームを手放すときに使える「居住用財産の3,000万円特別控除」をご存じでしょうか。
この控除額が売却益を上回れば、所得税・住民税がゼロになるケースもあります。
本記事では制度のしくみから申告手続きまでをやさしく解説し、気をつけたい落とし穴も具体例で紹介します。適用の可否や最新情報は国税庁タックスアンサーで必ずご確認ください。

◆ そもそも「3,000万円特別控除」とは?
所得税法第35条に定められた特例で、自宅(居住用建物とその敷地・借地権を含む)を譲渡した際の譲渡所得から最大3,000万円を直接差し引ける制度です。控除後の金額に長期 20.315%/短期 39.63%の税率を掛けて税額を算出するため、控除額が譲渡益を上回ると課税なしとなります。

項目 内容
対象者 自宅を売却する個人(共有の場合は持分ごとに適用可)
対象資産 自宅の建物と敷地(面積要件なし・借地権含む)
保有期間 長期(5年超)・短期(5年以下)いずれでも利用可
回数制限 売却年・前年・前々年に本控除またはマイホーム譲渡損失特例を使っていないこと
効果 最大3,000万円を譲渡所得から直接控除(所得控除ではなく課税所得計算前に控除)

1 税額はどれくらい下がる?― 具体例でチェック

区分 控除前 控除後 節税額
売却価格 5,500 万円 5,500 万円
取得費+譲渡費 ▲2,000 万円 ▲2,000 万円
譲渡益 3,500 万円 500 万円
税額
(20.315%)
711 万円 101 万円 ▲610 万円

※長期譲渡(所有期間5年超)の例。短期譲渡(所有期間5年以下)は税率39.63%となり、節税額はさらに大きくなります。


2 どんな物件が対象?――「居住用」と3年ルール

ケース 具体例・条件
① 今住んでいる自宅 マンションの一室・共有名義でも可。面積制限なし。
② 転居済みの旧自宅 転居した翌年1月1日から数えて3年目の12月31日までに売却すれば対象(=実質約4年弱)。
③ 家を取り壊したあとの土地 取り壊し後1年以内に売却し、かつ②の3年期限内であれば対象。

◆ 3年ルールのポイント
転居した日そのものを起点にするのではなく、転居した翌年の1月1日をスタートにカウントします。したがって、スケジュール上は「転居から丸3年+α(4回目の年末近く)」まで猶予がある計算です。売却時期を決める際は、この期限を必ず確認しましょう。


3 適用できる?5つのチェックポイント

判定項目(すべて満たせば原則OK)
売却相手が親子・夫婦・同族会社など特別関係者ではない
売却年・前年・前々年に3,000万円控除またはマイホーム譲渡損失特例を使っていない
同期間に買換え特例交換特例を使っていない
収用5,000万円控除などほかの譲渡特例と重複していない
店舗併用住宅の場合、居住部分がおおむね90%以上(未満なら按分計算)

4 つまずきやすい5つの落とし穴

ケース 理由 対策
親族へ売却 特別関係者は対象外 第三者へ売却し、公正な価格を確保
転居後4年目で契約 3年期限を超過 転居後は早めに媒介契約・決済
家だけ先に売る 家と土地は同時譲渡が原則 土地も同年度内に決済
居住割合80%の併用住宅 90%未満は按分控除 床面積を確認し按分計算で申告
売却益を全額ローン返済 納税資金が不足しやすい 税額を確保してから返済

5 申告の流れと必要書類

主な添付書類


6 よくある質問

Q 老人ホーム入居中に旧自宅を売っても使えますか?
A 空き家で維持し、3年期限内に売却すれば適用可能です。住民票を施設に移した場合でも、過去の居住を公共料金領収書などで証明できれば問題ありません。

Q 10年以上前に一度控除を使いましたが、再度使えますか?
A 売却年・前年・前々年に同控除またはマイホーム譲渡損失特例を使っていなければ再適用できます。期間制限は3年だけです。

Q 買換え特例とは併用できますか?
A 同一年中は併用できません。3,000万円控除で課税をゼロにするか、買換え特例で課税を繰り延べるか、税額シミュレーションのうえ選択しましょう。

7 併用できない主な特例と注意点


8 まとめ


参考リンク(国税庁タックスアンサー)

ご注意 本記事は令和7年5月現在の法令・通達等に基づいて作成しています。今後の改正や個別事情により取扱いが変わる場合がありますので、最終的な判断は必ず税理士等の専門家へご相談ください。