相続対策で生前贈与を活用するご家庭は少なくありません。しかし「贈与=必ず節税」とは限りません。
相続開始前の贈与には、次の二段構えのルールがあるためです。
令和6年(2024年)改正で加算期間が最長7年へ段階的に延長され、実務への影響は大きくなりました。本記事では最新制度を踏まえ、贈与財産の加算と贈与税額控除をわかりやすく整理します。
ポイント | 内容 |
---|---|
対象者 | 被相続人から相続人等が暦年課税で受けた贈与※1 |
加算方法 | 贈与時の価額をそのまま相続財産へプラス |
趣旨 | 生前贈与と相続をトータルで課税し、課税の中立性を確保 |
※1 相続時精算課税で受けた贈与は、別途相続税法21‑15に基づく持ち戻し規定が適用されます。
相続開始日 | 加算対象となる暦年贈与 | 補足ポイント |
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〜2026/12/31 | 死亡前3年以内 | 従来ルール |
2027/1/1〜2030/12/31 | 2024/1/1〜死亡日 (最長7年・最短4年) |
4〜7年分は合計100万円控除 |
2031/1/1〜 | 死亡前7年以内 | 同控除が恒久化 |
死亡前4〜7年の暦年贈与については、加算総額から一律100万円を控除して課税価格に算入します。小規模な贈与継続を配慮した措置です。
相続税額計算の最終段階で、次の式により既納贈与税額を控除します。
控除額 = (各人が加算した贈与財産価額 ÷ 各人の課税価格) × 各人の相続税額 - 加算財産に対応する贈与税額
※ 死亡前4〜7年部分には100万円控除を適用
項目 | 長男 A | 長女 B |
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加算前の相続財産 | 4,000万円 | 4,000万円 |
加算される贈与額 | 200万円 | 80万円 |
課税価格(加算後) | 4,200万円 | 4,080万円 |
按分後の相続税 | 259.7万円 | 252.3万円 |
贈与税額控除 | ▲4.4万円 | ▲5.0万円 |
納付相続税額 | 255万円 | 247万円 |
合計 | 502万円 |
ケース | リスク | 対策 |
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贈与契約書を紛失 | 証拠不足で二重課税の恐れ | 契約書・通帳コピーを10年以上保管 |
毎年110万円贈与を継続 | 2027年以降は3年超分も加算 | 高齢の場合は相続時精算課税も検討 |
贈与税を未申告 | 無申告加算税+控除不可 | 必ず申告・納税 |
Q1 110万円以内の贈与なら相続税は増えませんか?
A 増える場合があります。 110万円以下でも加算対象だからです。ただし死亡前4〜7年分の合計100万円は控除されます。
Q2 孫への贈与は加算されますか?
A 孫が法定相続人でない限り原則加算されません(養子縁組などで相続人となれば対象)。
Q3 相続時精算課税を選択後に暦年課税へ戻せますか?
A 途中変更はできません。選択は慎重に行いましょう。
ご注意
本記事は令和7年5月現在の法令・通達等に基づいて作成しています。今後の改正や個別事情により取扱いが変わる場合がありますので、最終的な判断は必ず税理士等の専門家へご相談ください。